1.著作物とはなにか
「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条第1項第1号)
(1)「思想又は感情」に関するものであること
→客観的な事実やデータなど、思想や感情を伴わないものは除かれます。
例)東京タワーの高さ:333メートル ×
(2)「創作的」であること
→独自の発想で新しく作り出されたもの
例)模倣品 ×
偶然同じものを創作した ○
実在の動物を精巧に表現したフィギュア ×
園児が描いた絵 ○
(3)「表現したもの」であること
→頭の中の考えでとどまっている状態のものや、アイデアそのものは除かれます。
例)すばらしいアイデア ×
新しい経済理論 ×
原稿なしの講演 ○
ジャズ等の即興演奏した楽曲 ○
舞踊の振り付け ○
(4)「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」ものであること
→文化の範囲に属すると認められることが必要
例)工業製品のデザイン ×←意匠等で保護
美術工芸品 ○
美的鑑賞の対象物 ○
- 著作物の種類
- 一般の著作物
→著作権法では、著作物の種類がいくつか例示されている。(著・第10条第1項各号)
1号 | 言語の著作物 | 小説、脚本、論文、講演、短歌、俳句等 映画・小説・テレビ番組のタイトル × |
2号 | 音楽の著作物 | 楽曲、楽曲を伴う歌詞等 楽譜になっていなくてもよい |
3号 | 舞踊・無言劇の著作物 | 日本舞踊、バレエ、パントマイムの振付等 舞踊それ自体 ×←著作隣接権で保護 |
4号 | 美術の著作物 | 絵画、版画、彫刻、漫画等 |
5号 | 建築の著作物 | 芸術的な建築物 |
6号 | 地図、図形の著作物 | 地図、学術的な性質を有する図面、図表、模型等 |
7号 | 映画の著作物 | 劇場用映画、アニメ、ゲームソフトの映像部分等の「録画されている動く影像」 |
8号 | 写真の著作物 | 写真、グラビア等 証明写真 × 防犯カメラの写真 × |
9号 | プログラムの著作物 | コンピュータ・プログラム(コンピュータに一定のまとまった仕事をさせるために与えられる命令の組み合わせ) プログラム言語 × 規約(プロトコル)× 解法(アルゴリズム)× |
※著作物の定義に当てはまっても、著作権の目的とはならないものがあります。(著・第13条)
- 憲法その他の法令(地方公共団体の条例、規則を含む)
- 国や地方公共団体又は独立行政法人・地方独立行政法人の告示、訓令、通達等
- 裁判所の判決、決定、命令等
- 上記のものの翻訳物や編集物
→民間の出版社が製作した法令集や判例集は含みません。
- その他の著作物
- 二次的著作物(著・第2条第1項第11号、第11条)
1つの著作物を「原作」とし、新たな創作性を加えて作られたもの。翻訳や翻案。
例)小説やエッセイを翻訳 小説を映画化、漫画化 漫画をアニメ化
→二次的著作物を「作る」場合は、「原作の著作者」の了解が必要。(著・第27条)
→第三者が二次的著作物を「利用」する(コピーや送信などをする)場合は、「二次的著作物の著作者」と「原作の著作者」の了解が必要です。(著・第28条)
- 編集著作物(著・第12条第1項)
百科事典、新聞、雑誌、文学全集といった素材を集めて分類、整理、配列することで作り出された「編集物」であり、その素材の選択や配列に創作性があるもの。素材がデータや事実など、著作物でなくてもよい。
例)職業別電話帳 ○
50音別電話帳 ×
→編集著作物は編集方法という「アイデア」を保護するものではないため、素材が全く異なれば同じ編集方法を用いても著作権は及びません。
→雑誌全体や文学全集全体をコピーする場合は、「それぞれの素材の著作者」と「編集著作物の著作者」の了解が必要。
- データベースの著作物(著・第12条の2第1項)
コンピュータにより容易に検索ができるように定めたデータベースであり、その情報の選択や体系的構成に創作性があるもの。個々の情報が著作物でなくてもよい。
→データベースの著作物全体をコピーする場合は、「個々の情報の著作者」と「データベースの著作物の著作者」の了解が必要です。
- 共同著作物(著・第2条第1項第12号)
2人以上の者が共同して創作した著作物で、その各人の寄与を分離して個別に利用できないもの。
例)座談会や討論会での出席者の発言内容の全体 ○
対談集 ○
絵本の文章と挿絵 × 歌曲の歌詞と楽曲 ×
→上記のように寄与分が分離できる場合は、結合著作物と呼ばれ、個々の権利が独立する。
→権利行使には著作者全員の合意が必要。
→保護期間は、最後に死亡した著作者の死亡時から起算される。
- 保護を受ける著作物
我が国の著作権法によって保護を受ける著作物(無断で利用してはいけない著作物)は次のいずれかに該当するもの。(著・第6条)
- 日本国民が創作した著作物(国籍の条件)
- 最初に日本国内で発行(相当数のコピーの頒布)された著作物(外国で最初に発行されたが発行後30日以内に国内で発行されたものを含む)(発行地の条件)
- 条約により我が国が保護の義務を負う著作物(条約の条件)
2.著作者とは
- 「著作者」とは、「著作物を創作する人」のこと(著・第2条第1項第2号)であり、作品のレベルを問わず、アマチュアでも著作者です。
例)幼稚園児でも、絵を描けばその絵の著作者
- 著作物の創作を他人や他社に委託(発注)した場合も、料金を支払ったかどうかに関わりなく、実際に著作物を創作した「受注者側」が著作者となるので注意。
- 著作者の推定(著・第14条)
著作者名を通常の方法により表示されている者は、「著作者」と推定されます。
例)絵画 ← キャンパスにサイン
書籍 ← 奥付に氏名表示
「推定」・・著作者が、自分が作ったという事実を証明しなくてもよい。反対の証拠が立証されれば推定が覆る。
- © マークについて
著作物に「© 」を付しておくことによって、昔のアメリカなど「登録を義務づけている国」においても、登録されているものとみなして保護されます。
- 法人著作(職務著作)(著・第15条)
1の例外であり、会社などの法人(団体)の職務として創作された著作物については、以下の要件を満たすものは、創作者個人ではなく、法人(団体)が著作者となります。
法人著作の要件
- 法人その他使用者(例えば、国や会社など。以下「法人等」という)の発意に基づくこと
- 法人等の業務に従事する者が創作すること
- 職務上の行為として創作されること
- 法人名義で公表されるものであること
→プログラムの著作物は、この公表要件は不要
- 契約や就業規則に「職員を著作者とする」という定めがないこと
注)職務発明との違い
→職務発明で、会社等が特許権者になる場合も「発明者」は自然人である発明者本人であることに注意。
- 「映画の著作物」の著作者(著・第16条)
多額の製作費がかかるため、特殊な扱いがなされる。
- 「プロデューサー」、「監督」など、全体的形成に創作的に寄与した者が著作者
- 映画製作会社の法人著作物である場合(製作会社の従業員のみで作成)
→映画製作会社が著作者(著・第16条但書)
- 著作者(監督等)が、映画製作会社に映画の製作に参加する約束をしている場合→著作権(財産権)は製作会社に帰属(著・第29条第1項)
- 権利の内容
著作物を創作した時点で、「著作者人格権」と「著作権(財産権)」が自動的に付与される。「無方式主義」(著・第17条第2項)
- 著作者人格権
- 著作者の精神的な利益を保護する権利であり、一身専属の権利(譲渡・相続できない)。(著・第59条)
- 著作者が死亡(法人著作者の場合は解散)した場合、権利は消滅する。